2014年03月24日

燻製

煙草を吸いながら窓の外を眺めているマスター、「雪だね」と呟くように。
雑誌に目を落としていたバイトの女の子が顔を上げて窓の外を見る。
「一昨日はとても暖かかったのに、急ですね」
「まぁ、三寒四温の季節だからね」とマスター、煙草の煙を輪っかのように吐出して、視線を女の子の方へと移す。
女の子が少し恥ずかしそうに雑誌の記事をマスターの視線から隠そうとする。
「何かイヤラシイものでも読んでたの?」マスター、薄笑いを浮かべて。
「違いますよ」と女の子、慌てたように。
「食べもの? グルメなヤツ?」
「違うけど、少し近いです」
マスター、女の子の返事に、ふぅん、と唸ったような声を出して、首を傾げる。
「まぁ、食べものなんだね。亜沙美さんの読みそうなのって、名店ガイドとかスイーツ特集くらいしか思い浮かばないけど」
女の子、恥ずかしそうに唇を尖らせる。
「マスターって干物作ったことあります?」
「干物? アジとかホッケの?」
「そうです。何か最近興味あるんですよ。干物とか保存食に」
「昔、ちょっとだけやったことあるけどね。タイとかカレイとか。タイは鱗が面倒だったけど。カレイはわりと簡単だね。亜沙美さん、作ってるの? 干物?」
「一週間くらい前に、スーパーでアジが安かったんですよ。まぁ、あと、鮮魚コーナーのお兄さんがかっこ良かったってのもあるんですけど、勢いで大量に買ってしまって。家に帰ってどうしようかなと思ったんですけど、干物、って言葉が浮かんできて。それで何となくやってみたら意外と面白くて。最近魚を下ろすのが楽しいんですよ」
マスター、その言葉に思わず煙を漏らす。
「渋いよ、亜沙美さん」
「それで魚を下ろせるようになってきたら、何でもできるように思えてきたんですよ。糠漬けも、燻製も。で、今の目標は美味しい干物と糠漬けで朝食を作ることと、自家製のベーコンでモーニングを作ることなんです」と女の子。少し勝ち誇ったような顔で『これでプロの味! 保存食のコツ』と書かれた誌面を見せる。
誌面には燻製の行程が写真つきで説明されている。
「次は燻製に挑戦してみようかと」
マスター、またしても「渋いよ」と半笑いで言葉を漏らす。
「いいお嫁さんになれると思わないですか?」嬉しそうな笑みを浮かべながら。
マスター、首を傾げて「干物女子から、燻製女子って、いぶし銀過ぎて怖いよ。糠漬けでも、最近は結構面倒そうなのに」と。
「失礼ですね。燻製女子は糟糠の妻を越える存在ですよ」
「まさに煙たいだけのような」とマスター、煙草を大きく吸い込む。
そして、「愛も燻すほどに味が深まるんですよ」との女の子の言葉に、マスター、思わず咳き込んで、苦そうな笑みを浮かべる。
「どうだろう。燻された愛って。樹木希林的なものを感じるけど」
「素敵じゃないですか。私の憧れですよ」
「彼女は素敵だけど。あぁいう夫婦関係は大変そうだなと」
「大丈夫です。保存食ができれば、人生の何でも受け止められますから」
「逞しいよ、亜沙美さん」とマスターが苦笑して。
窓の外では雪が止んで、青い空が見えて。バイトの女の子が頬を膨らませて。
posted by flower at 16:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月11日

性猫

寝返りを打つと、目の前に女の顔があることに気付いた。
正確には、居ることを思い出した、と云うのだろう。
女は猫に似た顔だった。
丸い輪郭に、大きな目、稜線の綺麗な鼻。
どこから来たのか、名前も、素性も話さない、そんな謎めいたところも猫のようだった。
私は寝息を漏らす女の頬を指でなぞった。ヒゲを描くように。右の頬と、左の頬に。
女はくすぐったそうに、僅かに動く。
その動きの愛らしさに、私はもう一度指で顔をなぞった。
と、女の呼吸が一瞬止まり、瞼が開いた。
闇の中で光る猫の目のように、黒い瞳が私を捉える。
そして、微笑む。
「まだ、朝には早いわ」と云って。
私は女の頬をゆっくり撫で、髪を撫でる。
長毛種の猫のように、滑らかな手触りだった。
女は気持ちよさそうに、息を漏らした。小さく赤い唇が艶かしかった。
私はその息に導かれるようにして、掌を彼女の肉体の一つひとつに這わせた。
項へ、耳孔へ、喉へ。そして、腕を、胸を、脚を。
漏れる息は肉体を下がっていくにつれ増えていった。
そして、私の掌は、彼女の臀部をなぞり、下腹部を包む。
と、女は身体を微かに振るわせて、か細い声で「ダメよ」と囁いた。
しかし、その言葉に反するように、女の表情は艶かしさを増している。
そして、猫が喉を撫でられるほどに歓喜の音を鳴らすように、女もまた、撫でられるほどに歓喜の声と音を漏らした。
「ダメって云っているのに」再び呟いて、含羞の表情を浮かべた。
私は、その愛らしい言葉を並べる女の唇が欲しくなった。
「ダメって云っているのに」
私が彼女の唇に唇を重ねると、女はそう言いながら、私の顔へ手を伸ばし、私がしたよりも丁寧に撫で始めた。仔猫が愛撫する手を丁寧に舐めるように。
そして、その手は、次第に私の肉体を下がっていった。
頬を、喉を、胸を、腹部を愛撫し、下腹部に達する。
「ダメ、なんじゃないの」
私が悪戯っぽく問い掛けると、女は唇を唇で塞いで「意地悪ね」と笑った。
そして、何度も唇を塞いだ。
私たちは、暗がりの中で互いを弄り、何度も身体を重ねた。
猫がじゃれ合うよりも激しく、肢体を押付けて。
肉体が暗闇に溶けそうなほどに。

それから暫くした新月の夜、女は居なくなっていた。
「恋の季節は旅がしたくなるの」女が云っていた言葉を思い出した。
街には沈丁花が香る頃のことだった。
posted by flower at 15:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月08日

性癖

自分ではない誰かになってみたい、生きていれば、そう思うこともあるのだろう。
ただ、その女は、その願望が極めて強いひとだった。
或るときは、ネオン街の夜の蝶に。或るときは、異国の踊り子に。また或るときは、有能な社長秘書になった。
派手な化粧をして(或るときは控えめに)、艶かしい服を着て(或るときは地味な装いで)、その職業を演じた。
スノウビッシュに穏やかな言葉を並べるときも、また、その逆にヒステリックに感情が滲み出たようなときもあった。
そして、普段の控えめな彼女とは思えない存在に豹変した。
彼女曰く、「こういう状況の方が、燃え上がるじゃない」とのこと。
そして、「自分じゃない誰かの方が、自分の裡に潜む自分が現れるの」と。
女は、仮令どんな地味な装いであっても、ベッドの上では大胆に振る舞った。
口に含んだブランデーを口移しで寄越したり、私の着衣を手を使わずに脱がしたりした(どのような手法かはご想像に任せるが、とてもセクシーな行為だった)。

或る夜のことである。その日はずっと雨の音が街を覆っていた。
私たちは町外れのモーテルで、週末のひとときを過ごしていた。
そのときの彼女は娼婦のような恰好だった。
手の指には真っ赤なマニキュア。唇にも真っ赤な口紅。網タイツから見える足の指にも真っ赤な色が見えた。そして、マスカラとシャドーでアイラインを強調したメイク。
紫のブラウスに、紫のスカート。白く細い首には、銀色のネックレスが掛けられ、その細さに更なる魅力を与えていた。
女は言う「今晩は、ご指名下さり、ありがとうございます」と。
また、「今宵は、精一杯のおもてなしをさせていただきます」と。
女は艶やかな目で私を見つめたまま、顔を近づけ、軽く唇を重ねた。
柔らかい唇が三度、四度と接触し、不意に軽く唇を噛まれ、舌が挿し込まれた。
それに呼応して、女の指が私の顔を撫でる。
二匹の蛇が絡み合うように、私たちの身体が縺れ合う。
互いの指が、互いの肌の上を這い、あらゆる場所を刺激する。
耳孔、項、首、胸の膨らみ、太腿、臀部−−。
そして私の指が、女の最も敏感な部分に到達したときには、雨に濡れたように、潤いに充ちていた。
私は訊ねる、「いつの間に、こんなに濡らしたんだい」と。
女は答える、「あなたの唇に触れたときからよ」と。
そして、「あなただって濡れてるわ」と、私のそれを弄びながら濃密な口づけをした。
柔らかい唇と舌先による甘美な感触が私を包み込み、全身のどの部分への愛撫よりも淫らな気持ちへ導いていった。
女は言う、「ちょうだい」と、淫らな表情で。
女は仰臥した私の上に跨がり、自身の濡れた花びらで、先ほど口づけしていた部位を包み込んだ。
言葉にならない声が漏れた。

窓の外では雨の音がしていた。そして、この部屋の中には、雨に濡れたような、私たち二人の結ばれた情交が、ぴちゃぴちゃと響いていた。
posted by flower at 11:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月17日

記念日

私は***よって殺された。
仕事を奪われ、
友人を奪われ、
子どもを奪われた。
人間としての自由な領土と時間と
個人の財産を奪われ、
そして、虚偽と誇張により信頼を失った。

温かい家庭の為に手に入れた家は廃墟のようなものに変貌し、
残ったのは空虚な時間ばかりだった。

生きている意味が判らないほどに漠然とした日々が重なっていく。

どれほどのことがあって
人から自由や友情や尊厳や子どもへの愛情を奪えるのだろう。

私の掌には無意味に時間を塗りつぶすアルコールの為の金しか残っていない。

私は***によって殺された。
悲しみと怒りが肉体を蝕んでいく。

私ははやく世界から消えてしまいたい。
消えてしまって、穏やかな日々へと埋没したいのだ。

***の記念日には
私の肉体に刻まれた悲しみと怒りを贈ろう。
丁寧に艶やかな包装紙で飾り、
時間を指定して届けよう。

***は刻まれた私の肉体を見てどう思うのだろう。
「またひとり死んだ」とだけ思うのだろうか、
とりあえずの悔恨を口にするのだろうか。

私は***によって殺された。

母親の愛情を奪われ、
わずかばかりの夢も奪われた。

孤独な時間ばかりが積み重なっていく。

あと幾日かしたら記念日だ。
そのときは私の肉体を切り刻んで贈ろう。
時間を指定して、
綺麗な箱で。

***はホルマリンに漬かった私を見てどう思うのだろう。
「残念なできごと」とだけ思うのだろうか、
あまたの言い訳を口にするのだろうか。

私は***によって殺された。
そして、暗闇ばかりが残された。
posted by flower at 18:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

痴図

私たちは知らない街の地図の上で逢瀬を重ねた。
素敵な名前の喫茶店があれば、
「ここで二人で紅茶を飲んだのよね。貴方は新聞を広げて、わたしは詩集を読んで」
彼女はアールグレイの紅茶を飲みながらそんな話をした。
気になる洋食屋があれば、
「ここのゴルドンブルーがもう一度食べたいわ。あと、あのオムライス。デミグラスソースが半熟の卵とよく合うの」などと幻の記憶に舌鼓を打った。
私はそれに合わせるように、ときに小さな出来事を話し、ときに会話の断片を話し、彼女の記憶に色を着けた。
また或る時は、バーであったり、映画館であったり、美術館であったりしたが、それぞれに物語を付与し、豊かな思い出へと昇華させた。
作られた思い出の中には、情熱的な愛についての物語や、何とも言いようがない悲しい話もあった。
「この小径、覚えてる?」と彼女は云う。眼には悲しげな色を浮かべている。
「あなたとケンカをしたの。何が理由だったかは思い出せないけど、とても切なくて」
そう云って最後には涙を浮かべて。
私はケンカの理由を必死で取り繕って、涙を浮かべる彼女を優しく抱いた。
「もう、ケンカはしないよ。愛しているのだから」私は優しく彼女の唇に口づけをした。
すると、瞳以上に潤いを持った唇は、私へ艶やかに返答する。
「ねぇ、もっと愛して」と。
私たちは抱き合うようにしてベッドに倒れ込み、地図帳をめくるように一枚、二枚と衣服を脱がし合っていった。
「あなたと泊まったあのHと云う街のホテルが素敵だったわ。ロビーがクラシックなサロンのようで。美しいシャンデリア、赤い絨毯、緑色の壁には古いヨーロッパの町並みと子どもたちの写真。
部屋もよかったわ。昔の映画で見たような落着いた内装に、シックな調度品。広い部屋の窓からは、美しい山々が見えて。私たちは、あのふかふかの大きなベッドで何度も愛し合ったのよね」
彼女は「あの夜の会話、覚えてる?」と訊ねてきた。
それに対し、私は最初とぼけて返答した。
彼女は「ヒドいわ。もう、忘れたなんて」と云って、私の“忘れた”物語を話してくれた。それを聞いているうちに、私は「そうだったね」「いや、違うよ」と相づちを挟みながら、物語を思い出すことに努めた。
そんな会話のひとつに、
「わたしの身体のこと、覚えてる?」と云うものがあった。
それは彼女の身体の部位についてのエピソードを求めるものだった。
私は「あの街で、とても可愛がったね。きみが、そこが感じるからって」
そんなことを云って、私は彼女の、乳房を、耳朶を、太腿を丁寧に愛撫した。
そして、「恥ずかしがって、なかなか見せてくれなかったけど。でも、本当にとても美しいよ」と彼女の花びらに口づけをした。
彼女のそこは、唾液で濡れるよりも前から、朝露が溜まったかのように、十分に潤っていて、素敵な香りを漂わせていた。
彼女は「いつまでも忘れないでね」と云って、私の身体に強く愛を求め、官能の記憶へと埋没していった。

見知らぬ街の地図を広げるたびに彼女の声が甦ってくる。あの肉感とともに。
posted by flower at 13:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月05日

初恋

私の何度目かの恋の話である。

その恋人はツルゲーネフの『初恋』が好きだと云う女性だった。
古本屋で見つけると必ず買い、大事そうに持ち帰っては広くない自室の本棚に丁寧に並べた。
文庫本もそうでないものもあったが、字も読めないのに海外のものまであった。
「言葉も、ジナイーダの存在も魅力的だけど、初恋と云う言葉が好きなの。だから買っちゃうのよね」
バラのジャムが入った紅茶を飲みながら、その女性はさっき買ったばかりの何百何十何冊目かの『初恋』を手に語った。
「初恋って瑞々しい果実のようであり、霜柱のように儚いものよね」
女性はそう云うと、小説の中の一節を朗読した。
「好きなんだ、この文が」うっとりとした表情を浮かべる。
と、不意に、女性の目が私を捉え、私の頬を白い指で撫でた。
ゆっくりと白く細い指が上下し、愛撫する。
「もぎたてのプラムのようね」
私の産毛を、確かめるように。
「もっと触れていいかしら」彼女の十本の指が私の顔を包む。
そして、赤い唇を近づけ、私の口唇に触れた。
幾度か強く寄せられ、幾度か強く返した。
幾度目かで互いの割れた口唇からぬらりとした触覚が伸び、縺れ合った。
指が互いの顔を、頭部を愛撫し、背中から臀部へと移った。
数分後、彼女がゆっくりと服を脱ぎだした。
ひとひら、ふたひらと花弁が落ちるように、服が床に広がる。
紫色の薄いレースのシュミーズだけとなった彼女は、椅子に腰を下ろす私の膝上に跨がり、『初恋』の一節を読み上げた。
私の眼前には小さく尖った乳房が透けて見えている。
それもまた、初々しい果実のようであった。
「何度も初恋ができたらと思うの。あの、切なさを。あの、心の昂りを、何度も味わいたいの」
そう云うと、彼女は私の唇に自身の乳房を押付けて寄越した。
シュミーズ越しにその尖端が当たる。
私はそれを唇で受け止め、唾液のついた舌で弄んだ。
女性の口からため息が漏れる。
私の愛撫に呼応するかのように、女性の手が私を掴み、昂った想いを更に挑発した。

四方を本に囲まれた彼女の部屋で、私たちは何度目かの初恋を楽しんだ。
夜が更け、朝の陽が窓辺に伸びてきても、私たちは愛を語り、愛を確かめた。
女性は云う「どんなに肉体が素敵な快楽の中にあったとしても、不思議なもどかしさを感じる時があるの。互いの敏感な部分を触合わせているよりも、口づけをしているだけで、相手と感応し合えていると思う時が。私はそんなひとときを求めてしまうの」
女は私の唇に自身の小さな唇を重ねると、恥ずかしそうに笑った。
posted by flower at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月14日

朝露

「ねぇ、もう少しだけ」と女は言い、私の耳を噛んだ。
女が私の身体をまさぐりだす。
掌が喉を、項をまさぐり、顔を構成する部位を一つひとつ確認していく。
目を、耳を、鼻を、そして唇を。
唇を摘み、撫で、そして自身の唇で愛撫を始めた。
唾液と唇と舌が淫らな音を立てる。
「夏は嫌いよ。すぐに朝になっちゃうから」
女はそう言って、私の唇に熱い口づけを施した。
私の口内で女の舌が蛇のように蠢いている。
舌の根や歯の裏にまで潜り込み、撫でていく。そして、強く私の舌を吸う。
「でも、裸でいても寒くないのは好きかも。あなたもわたしも、裸のまま、ずっといられるから、あなたの身体をこうして感じていられる」
女はその唇で私の乳房を舐めだした。小さな私の乳首を悪戯するように。
左右にある乳首のうち、右を女の舌が、左を女の右手が、それぞれに挑発している。
上に乗った女の下腹部が私の腹部に触れ、生暖かさが伝わってきた。
私の目に枕元の時計が映った。午前6時になる10分前だった。
「冬ならまだ、真っ暗な時間よ。なのにもう今は、外は明るくなってきて」
カーテンのない私の部屋は朝の光に侵蝕されつつあった。
そして、その光は、私や女の身体をも覆い始めた。
女の白い肌がいっそう白くなっていく。
果実のような臀も、掌に収まりそうな女の胸も、細い腕も、長くしなやかな脚も太陽の光に染まり、夜の闇の中で蠢いた女の肉体とは違って見えた。
急激に私は欲情した。
女の身体を激しく求めたくなったのだ。
その乳房を、臀を、肌を、その身体にうっすらと漂う汗の匂いまでも。
加速しだした欲情に押され、最前女が私に施していた事を、今度は私が女に施し始めた。
女を下にすると、女の顔を構成する部位の一つひとつを丁寧に舐め、四肢のあちこちを刺激した。指の先で、舌で、歯で、できる限りの愛撫と挑発をした。
そして、それらの行為は女の身体の中心へと次第に向かっていき、脇の下から両の胸に移行すると、最も熱くて、敏感な場所へと向かった。
女の脚を広げると、朝露に濡れた芙蓉ように、女のそれは既に潤いに満ちているのがわかった。女の顔を見れば、瞳まで潤っていた。
「焦らさないで。お願い」
猫がねだるような女の声を無視して、私は女に丁寧に口づけを始めた。
もちろん子猫の方にである。軟体の生き物のように舌を這わせ、女の露を楽しんだ。
女の口から漏れていた声が、大きくなっていく。
そして、女の手が、私の肉体に催促しだした。
「もう、待てないの」
上体を起こした女がその口で私を潤し、そして、互いの肉体を交錯させた。
朝の光の中に存在する女の淫らな顔は、何とも云えないほど愛らしく思えた。
何度も口づけを交わし、上になり、下になり、互いの肉体を確認し合った。
しばらくして私たちはそれぞれに快楽の極みに達すると、朝の光の中で眠りに落ちていった。
先に眠りに落ちたのは女だったが、朝陽を浴びたその寝顔もまた愛らしいものであった。
posted by flower at 13:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月02日

性座

「あのときのあなたは、もっと熱い口づけでしたわ」と女は言い、
「情熱なんてものは天気のように移ろいやすいんだ」と男は言う。
ふたりは赤い唇を重ね、幸福な刹那を刻んでいく。
スタッカートのような、唇が短い接触を繰り返す。
「あのときのお前は、もっと淫らな口づけだった」と男は言い、
「でしたら、もっと淫らな気持ちにして欲しいわ」と女は言う。
男の唇の間隙から舌が這い出し、女の舌に絡みつく。
男の両手が女の頭部を押さえ、舌で口内を蹂躙する。
「もっと、激しい口づけが欲しいの」と女は言う。
「だったら、もっと淫らな口づけを」と男は言う。
女の指が、男の項を、耳孔を、耳朶を挑発する。
男の口づけがその行為に触発され、激しくなる。
「とても淫らな顔だ」と男が言えば、
「もっと淫らにして」と女が訴える。
男の手が女の乳房の上に置かれる。弾力を確かめるように、幾度も乳房を揉む。
左右の乳房を揉みしだき、硬くなった乳首を摘む。悦びが滲んだ息が、漏れる。
「もっと気持ちよくして欲しいの」と女が言えば、
「だったら、どうして欲しいんだ」と男が訊ねる。
女の手が、男の手を取り上げ、自身の敏感な場所へと導く。
男の手は、ひとつひとつを確かめ、女の呼吸を乱していく。
「ここは、どう」と硬さを蓄えた突起物に触れながら男が問えば、
「とてもいいわ」と愉悦の色に染まった声を漏らして女が答える。
男は、女の肉体を狂わせるように、赤紫色した肉の芽を舌先で転がす。
女は、快感に肉体を振るわせながら、男の頭を自身の秘所へ押付ける。
「とても、気持ちがいいわ」と女が呟き、
「もっと、させてあげるよ」と男が囁く。
男の二本の指が体液に潤った前門を潜り、ザラザラとした内壁に接する。
その感触を楽しむように、初めはゆっくりと動き、次第に加速していく。
「とても濡れているよ」と男が囁き、
「もっと激しく愛して」と女が喘ぐ。
女は男の肉茎を握り、自身の唇へ導く。
果物のような赤い膨らみを、口にする。
「イケないほど硬くなってるわ」と女が言い、
「おまえのはとても濡れている」と男が言う。
ベッドの上に横たわる女。それに正対する男。肉体が重なる。
硬直した肉茎が、体液が溢れる肉の裂け目に飲込まれていく。
「卑猥な顔だ」と男が誹れば、
「強く突いて」と女がねだる。
男の腕が女を強く抱きしめながら、愛に満ちた動きに力を込める。
女の口からは声にならない悦びがこぼれ、男の腕に歯の形を刻む。
「とても幸せよ」と女は囁き、
「幸福な時間だ」と男は頷く。

夏の夜の星座が消えるまで、ふたりは肌を重ね合い、愛の時間を歴史に刻んでいった。
posted by flower at 16:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月22日

靡香

いい香りのする女だった。
革張りのソファーに長い四肢を持て余すように腰掛け、ときおりアニスの匂いをとどめたアルコールを口に運んでいる。
身に付けているものは紫の薄いキャミソールのみだった。乳房が透けている。
細すぎも、太すぎもしない四肢、潤いを保った白い肌、漆のような黒く艶やかな髪−−姿態を構成する一つひとつも十分に魅力的だったが、項の辺りから漂う沈丁花のような甘い香りが、私を挑発した。

私は彼女の隣に腰を下ろすと、何度も甘い香りを楽しんだ。
女は昂って行く私を楽しむように、私の耳元へ口を寄せて耳朶を噛み、そしてその香りを私の鼻腔に突きつけた。
女は言う。「素敵な香りでしょう」と。
私は肯定を返す代わりに、女の項に舌を這わせた。
女の口から甘いため息が漏れ、次に私の耳孔へ舌が捩じ込まれた。
言葉を発することもなく、黙々と縺れ合う。
しばらくすると細長い指が伸びた彼女の掌が私の顔を包んだ。
「もっと別なところも試してみる?」
女の魅惑的な言葉はさらに私を欲情させる。
そして「世界中の何よりも、素敵な香りよ」と淫らな笑いを漏らした。
女は長い脚を開き、私の頭を迎える。
日陰に咲いた牡丹のような花が私の視界に入り、臭覚は、最前の沈丁花の如き香りよりも甘いものを捉えた。
「もっと楽しみなさい」
女は芳しき香りの源泉を露にし、私をさらに煽るように淫らな行為を始めた。
右の手の二本の指が膨らんだ紫の蕾みを摘む。
左の手の二本の指は紫のキャミソールの下に潜む乳房の、過敏な尖端を摘んでいる。
淫らな声が漏れだすとともに、さらに甘い香りが漂いだした。
私は自身の欲情に屈したように、女の泉に舌先を伸ばした。
水銀よりも妖しく、水よりも濃い液体が舌を伝って口中に入ってきた。
女は言う。「もっと楽しみなさい」と。
私はその言葉に駆り立てられ、淫らな音を立てながら甘い香りのする液体を啜った。
互いの昂りが昇りつめる頃、女は私の頭をその両手で包み、自身の唇へと導いた。
柔らかい肉感が私の唇を迎えた。舌が縺れ合い、互いの肉体を互いの四肢がまさぐる。
「今度はわたしにも楽しませて」潤んだ瞳が私を見つめる。
両の手で硬直した私の肉茎を引き出すと、厚みのある艶かしい唇で捉えた。
キャンディーを楽しむように舌の先を絡ませて、音を立てる。
恍惚とした感覚が脊髄を昇り、脳に堆積する。官能の情感が私の口から息となって溢れた。

しばらくすると女は私を寝かせ、その上に跨がった。
硬直した肉茎が、濡れた華芯に収められる。花びらに包み込まれる。
女の口から、またしても淫らな息が漏れた。

空間中に甘い香りが充満していた。
行為が終わってもその香りは私を刺激し、青い茎を萎ませることはなかった。
女は言う。「どんな香水よりも、わたしは官能的なのよ」と。
私は女を抱き寄せ、その項に何度も口づけを施した。
posted by flower at 20:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月20日

性命

月灯りの射す一室で私たちは世界を眺めていた。
眼下には月光を返す海原が広がり、天空には星々が燦然と煌めいている。
傍らに置かれた蓄音機からは、1960年代にピアニストのルードヴィッヒ・N・シュナイダーが録り残した楽曲が流れてくる。反復する小節は螺旋状の隆起を形成し、脳内に心地よい安らぎをもたらしてくれる。曲名は「世界に関する中間報告 性愛の観点から」。ミニマリズムの古典ともいわれる曲である。
彼のメモ−−性愛さえなければ世界史はボトルの中の水のように穏やかだった。性愛を手にしてしまったばかりに、世界には混沌が訪れ、悲しみが増えてしまった。そして、皮肉にも悲しみにより文学が導かれた。つまるところ、性愛は混沌となり、文学に帰結する。そうでなければ、欲望の排泄的な行為である。
彼からすれば、その時の私たちの存在はどちら側だったのだろう。
愛を持て余した私たちは。
女はいつも私の肉体を求めた。私は女の中にある安らぎを求めていた。
女はいつも私に熱い口づけを施し、私は女の乳房に幼き日の唇の慰めを強いた。
女はいつも私の欲情を煽り、自己の奥深く、濡れた真部へと私を導いた。
私は女の母性に寄りかかり、女の体内に埋没し、包まれようとしていた。
そして今夜も、長く、短い、極彩色のひとときが訪れる。
女は言う、「もっと愛して」と。
私は答える、「愛がわからない」と。
女は言う、「簡単よ。私の唇を優しく、烈しく吸うことが愛よ」と。
私は答える、「フルートを奏でるのに似ているね」と。
私たちは互いの腕の上に頭をのせ、口づけを交わした。
私は優しく、烈しく女の唇を吸った。
女の舌は烈しく、優しく私の腔内を嬲った。
ボレロのように反復される行為は、わずかずつ濃密さを増していく。
互いの腕が交錯し、肉体をまさぐりだす。
女は言う、「もっと愛して」と。
私は答える、「何を求めるんだい」と。
女は言う、「自分を慰めるよりも丁寧に、肉体を刺激して」と。
私は答える、「真白いレースに刺繍を施すようだね」と。
私たちは互いの肉体を、丁寧に愛撫した。
皮膚の細胞ひとつひとつを、それぞれの指で覆うようにして。
髪を掻き分けて項をまさぐり、耳朶を揺らし、耳孔を塞いだ。
喉から鎖骨へと指を滑らせ、乳房で小刻みな小休止をした。
腹部を撫で、下腹部の花びらに最上級の口づけを施した。
女の脚が悶え、私の肉体に絡みつく。
女は言う、「もっと愛して」と。
私の唇は潤った女の花びらに塞がれて何も答えることができなかった。
女は言う、「強く大きな愛を下さい」と。
そして、昂って硬直した私の蒼い存在を自らの内部へと導いた。
ぬめりとした感触が私を飲込み、またしても私は女の中に埋没してしまった。

女は言う、「愛しているの」と。
私は夜空を眺めながら、愛と云う名の星座を探したがわからなかった。
天空にはヴィーナスとアンタレスが輝いていた。
posted by flower at 16:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月03日

性痕

蝋燭が揺らめくテーブルの上にはワインのボトルが2本と枝付きの干しぶどうが入った皿、それとハートやスペイドの描かれたカード。
私たちは、ときおり赤いワインを体内に流し込みながら、ポーカーを楽しんだ。
それぞれの手元には5枚ずつカードが配され、互いに顔色を窺いながら手元のカードの数字やスートを揃えるべく慎重に数枚を捨て、機械的に同じ枚数だけストックから拾った。
私たちはコインの替わりに互いの肉体を賭けた。
勝った方が相手の肉体に口づけができるというものだった。
口づけは指の先から始まり、両の腕、胸、腹、大腿、と下降し、爪先を目指した。また、口づけはその痕跡を残さねばならず、グレードの高い手で勝った時ほど長い時間の口づけと噛むことを許された。
簡単に言えば、最終的な目標は、口づけによる相手の肉体の占領だった。
故に唇への口づけが最終的なゴールだった。

女はワインを一口含むと涼しげな笑みを浮かべた。
「レイズ。右の乳房も賭けるわ」
私は干しぶどうを一摘み食べ、ワインを飲んだ。そして、自身の手元のカードを確かめるとコールした。
互いの手札を開示する。
女はハートのフラッシュで、私はジャックとキングのフルハウスだった。
女は少し戯けたような仕草をすると、真っ赤なナイトドレスを脱いで、黒のガーターベルトにストッキングという姿になった。魅惑的な部分を優しく覆う布はない。
私は女の臍に長い口づけをし、左の乳房を噛んだ。女の口からは呻くように息が漏れた。
続いての勝負は女がクイーンのスリーカードで勝ち、私の首に色の濃い痕跡を作った。
その次も女が勝って、私の右胸に歯形を残した。
互いに衣服はほとんど身に付けておらず、上半身のあちこちに赤や紫の痣が見える。
私はワイングラスを空けると、次のラウンドで強気な勝負に出た。
女の手を嘲り、強引につり上げた。
「どうなっても知らないわよ」そんな言葉も無視して。
ドローの後の新しいカードを確かめずに開示した。
7のフォーカードで、果たして私の勝ちであった。
私は女の太腿を愛撫しながら、敏感な部分に口づけをした。
小さな木の実のような突起の下からは蜜が溢れている。
私は舌の先でそれを掬い、小さな木の実を優しく転がした。グラスの中でワインを転がすように。女が呻き声に似た声をまたしてもこぼした。
私はその敏感な部分へ長く情熱的な口づけをした。
次は女の番だった。昂った薄紅色の感情をぶつけるように強引な勝負に出てきた。
「覚悟はできてる?」
開示すると、ハートのストレートフラッシュで、女の勝ちだった。
女は私の実存を隠すささやかな一枚を脱がすと、烈しい口づけを敏感な部分へ施したのだった。
両の手と唇とを使い、淫らな音を立てながら。私から気力までも奪うような行為だった。
官能が昂り、肉体が先を促す、も女は悪戯な笑みを浮かべて勝負へと戻った。
「まだダメよ」右の目でウィンクして。

私たちはそんな挑発を繰返しながら、互いの欲情を煽ったのだった。
最後に唇に口づけをする頃には、野獣性に充ちた表情になっていた。

posted by flower at 15:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月28日

淫唇

柔らかい唇だった。
艶かしく潤い、指でなぞるだけで、官能さが込み上げてきた。
女は目を閉じて、私に口づけをねだった。
白い肌と赤い唇のコントラストが欲情を誘う。
私は女の右の頬に手をあて、顔を寄せ−−唇を重ねた。
心地よい弾力が私の唇に訪れる。
強く押付け、少し離し、顔を見つめ−−私は何度かそんなことを繰り返した。
女の顔は目を閉じたままであったが、どこかに恥じらいと性の愉悦とが混じり、いっそう艶やかな表情になっていった。
何度目かの口づけの際に私は女の唇に舌を挿し込んだ。女の唇が開かれて、私の舌にぬるりと絡んできた。淫らな触手のようだった。
舌と舌がもつれ合い、互いの腔内を行きつ戻りつし−−息が荒くなり−−。
女の顔を確かめると、白い頬が紅みを帯び、うっすらと開かれた目が私に次のものを求めているようだった。
だが、私はその唇から離れたくなかった。
世界のあらゆらものの中で最も官能的な、唇から。
私は女の唇を確かめるように、今度は軽く噛んだ。
女の手は私の顔を弄り、私の手は女の身体を弄っている。
白く細い指が耳朶に、耳孔に、項に、小鼻に、唇に挑発するように、優しく触れる。
私の指は女の喉を、鎖骨を、乳房を、肋を撫で−−臀部を強く掴んだ。
女の唇の間から息が強く溢れた。
今度は衣類の隙間から手を挿し込み、大きな臀部を強く、荒々しく掴み、その愛撫に呼応するかのように激しく息の漏れてくる唇を唇で覆った。
閉じられていた女の目が開かれて、さらに淫らな表情になった。
私は臀部を弄っていた手を女の前部へと移し、もうひとつの唇を指で広げた。
温かい液体が指に絡む。
私は貝のような、艶かしい感触を何度も確認しながら、最も敏感な花芯を弄った。
呼吸が大きく速くなり、女の目は懇願するように、私を見つめている。
女のすべてが愛おしくなってきた。
私は女の衣類を剥ぎ取り、下半身を露にすると、潤いを湛えた桃色の花びらに口づけをした。私の舌にも潤いは伝わり、更なる欲情を導く。
女も欲情が加速してくると、その体位を変え、私の下半身に頭部を寄せた。
そして、私の下半身から衣類を奪い、淫茎に魅惑的な唇をあて−−官能的な愛撫を始めた。淫らな音が空間に響く。
欲情に押されて私も女の花びらに激しく舌を這わせた。激しく振る舞うほどに、女の唇には力が込められ、愛撫も力強くなっていった。
海の水よりも濃いほどに潤いが充ちてくると、私たちはようやくひとつになった。
互いの肉体を交錯させ、五感のすべてを官能のなかに埋没させた。
喉が渇けば互いの体液を口にふくみ、感応を確かめるように見つめ合い、いくつもの敏感な場所を指で刺激し、互いの肉体から放たれる生々しい匂いを共有し、淫らな音で痴態を加速させた。
だが、私が最も堪能的だと思ったのはやはり女の唇だった。
禁断の果実とも言うべき、柔らかい唇に触れるたびに私は欲情し、幸福と安寧を感じたのだった。
posted by flower at 14:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月25日

性夜

女の手が私を挑発している。
薄明かりの中で、私の全身をひとつひとつ確かめるように、その細い指で。
髪を掻き分け項をまさぐり、耳の孔を侵し、耳朶を蹂躙し、鼻を、唇を、弄ぶ。
首を、胸をなぞり、臀部までも。そして、私の唇を開けて、舌までも弄る。
「あなたのすべてが愛しいわ」女の唇が私の唇を塞ぐ。
両の手が私のあらゆる場所を撫で、激しく掴み、舌が私の舌に絡みつく。
悶えるような女の肉体は、私の肉体にしがみつき、感応の息を漏らした。
しばらくの間、口唇による交歓が行われた後、舌による挑発を加えて、女の両の手は下へ下へと移動していった。臍を、臀部を挑発し、そして敏感な部分へと指は伸びる。
「あなたの身体が愛しいの」指が私の敏感な部分を挟み込み、上下に動く。硬くなった内部では、体液が蠢いている。
「とてもかわいいわ。かわいくて愛しいのよ」女の唇が硬くなった部分を覆う。
ゆっくりと女の頭が動き、ぬるりとした感触が神経を伝って上昇してくる。
口からは唾液が溢れ、根元を濡らしている。
ときに唇から離し、舌を這わせる。丁寧に、軟体動物のように。ぬめり、ぬめりと。
官能的な昂りが彼女をも濡らしていく。
女の薄い花びらに指を伸ばすと、潤いが蜜となり、滴ってきた。
甘い声を漏らし。
私は女の臀部を私の顔の上に跨がらせ、薄い花びらを丁寧に舐めた。
女の私をふくんだ唇からは声が、鼻からは儚げな息が漏れた。
「いいの」
女は私の愛撫を受けるほどに、甘い声を漏らしながら、激しく返して寄越した。
品のない食べ方のように、音を立てて。
「まだ、だめよ」
その濃厚な愛撫に吐精しそうになると女は意地悪く爪を立てた。
そして、しばらくすると私の硬い部分を下の唇で飲込んだ。
豊かに潤った唇は、舐めるように飲込み、奥の間へと招き入れた。
「気持ちいいわ」
女がゆっくりと腰を前後に動かす。ねちょりとした触感が昇ってくる。
前へ、後ろへと動き、しだいに速くなってきて、潤いが私の下腹部に広がった。
甘く、無防備な声が漏れる。
腰は私に適度な圧迫感を与えながら、官能的な昂りを連れてくる。
「いいわ」
女はそう言って体位を変えた。
くるりと私に背を向け、臀部をこちらに見せながら、上下に揺れる。
薄い明かりの中で、臀部と脚の付け根の隙間に私と女との唯一の結合点が見えた。
淫らな音を立てる水よりも高い粘土を持った体液の存在がその辺りに捉えられた。
上下に動く臀部は激しさを増し、女の声が次第に大きくなっていく。
そして、一瞬の痙攣とともに声が途切れ、腰が落ちた。
私は彼女を下ろすと愛しい部分をゆっくりと口唇で愛撫した。
歓喜の声が漏れてきた。
私は女の上に被さるとその濡れた部分に再び潜り込み、愛液による淫らな音を響かせた。
夜の間、私たちはそんな行為を繰返し、淫らな時間を過ごした。
12月24日のことだった。

posted by flower at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月12日

首淫

首の綺麗な女だった。
首は白鳥のように細く長く、百合や薔薇の茎や蔓のように気品に充ちていた。
肌の色は、雪が降ったような白さだった。

私はいつもの彼女の首を如何に美しく演出するかに心を砕いた。
胸元の開いたドレスを着せ、象牙や琥珀、アクアマリン−−様々なトップのネックレスを贈った。黒く長い髪も素敵だったが、項が見えるよう高い位置で留めさせた。
いつかどこかで見た、古い映画の女優のような姿だった。

週末には二人だけの夜想会をよく開いた。
出席者は私と彼女だけだった。
青や緑のシックで艶やかなドレスを纏った彼女とワルツを踊り、イタリア産の果実酒を楽しんだ。白い肌の彼女には青や緑の清楚なドレスが良く似合っていた。

レコードに針を落とし、手を取り合ってゆっくりと輪舞する。
くるくると廻りつつ、私の目は彼女の顔を捉えながら、やはり首に見蕩れていた。
白く細く、長い首に。
彼女の存在も素敵であったが、もっとも私の目を惹いたのは、瞳や唇よりも首だった。

本当の愉しみは宴の後だった。
彼女の手を取って寝室まで案内するとワイングラスをブランデーグラスに替え、高貴な香りで口を濡らし、彼女の唇に唇を重ねた。
何度も重ねた。軽いものもあれば、深いものもあった。

官能性が増してくると私の唇は彼女の首に移った。
白い首を慈しむように口づけをし、そして徐々に、子どもがアイスクリームを楽しむように私もそうした。

ドレスを剥ぎ取り、白い肌を露にさせる。
下着は−−花嫁の下着のように、真白いコルセットと、白いガータベルト、白いストッキングも着けたままである。
四肢も細く、魅力的である。
私は、そのひとつひとつにも口づけを施していった。
彼女は優雅でありながら、官能性を持って口づけに応えた。
場所によっては艶かしい声が漏れた。

手に、脚に、口づけを施すと、私の唇は鎖骨に移り、首に戻った。
そして、コルセットの剥ぎ取り、その下に潜んでいた赤い実へと移した。
赤い実を小鳥のように啄んだ際に漏れた女の声は、ブランデーに落としたスターアニスの香りのように、魅惑的に響いた。

女の上に身体を重ねて行為に及んでいる間も、彼女の首が気になって仕方がなかった。私の興奮している感情の多くが、美しい首によるものだった。
強く抱きしめながら、何度も首を愛撫した。
甘く噛み、強く吸い、優しく舌をあてた。

私は彼女の首をどうしたかったのだろう。
あの美しい首を。
ときどき思い出すのだが、最も興奮したのは、あの首に私の唇の痕を残したことよりも、きつく両の手で締めたときであった。
美しく儚いないものが、この私の手の中で−−と思うとそれまでに味わったことのない、背徳を背にしたような歪な興奮が訪れて、私は果ててしまった。

女の写真を見るたびに不思議な感情が、冬の白鳥のように飛来してくる。
posted by flower at 15:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月03日

淫酒

「紅茶ならロンネフェルトのダージンリンをちょうだい。コーヒーならヒギンスコーヒーのを。とても濃いめで。もちろんブラックよ」
あれこれと注文の多い女だった。
ブレックファストでもランチでもディナーでも。そして、ティータイムのときも。
「わたしの口にするもの、手にするものは、すべてわたしの気に入ったものじゃないと嫌なの。分からない? この『わたし』という絵画を装飾する額縁も、相応でなければならない、ということよ。魅力を損なわず、また、過剰に主張しすぎずに『わたし』という存在を際立たせることができるものよ」
私は、そんな彼女の話に適当に頷きながらコーヒーを、或いは紅茶をサーブするのだった。彼女はいつも何も身に付けない全裸の姿で、お気に入りの革のソファに腰を下ろし、ティータイムを楽しんだ。
「ベッドタイムで楽しむお酒はワインじゃないわ。春ならペルーノ、夏ならラム、秋ならブランデー、冬ならシングルモルトよ。
つまむものはなくてもいいわ。口づけをしながら楽しめばいいんですもの」
私たちはベッドの上でもアルコールを楽しんだ。
もちろん、何も身に付けず、裸のままで。
春ならペルーノ、夏ならラム、秋ならブランデー、冬ならシングルモルトを少しずつ口に流し、高貴な香りを漂わせながら、唇を重ねた。

アルコールに濡れた唇が彼女の魅力を引き立てている。
真白く、滑らかな肌が私に寄り添い、次第に重みが加わってくる。
「いいお酒と、裸の異性がいれば、愉しいひとときになるのよ。
裸の異性も、素敵なひとでなければいけないけど」
女は私の上に跨がり、私の身体を愉しみだした。
唇に、胸に口づけをし、アルコールを垂らし、舌で舐める。
アルコールを垂らす位置は、徐々に下がっていき、臍や、私の敏感なところへと移った。
「わたしが口にするものは、高級なものよ」
そう言って、私の硬直した部位を口にふくんだ。
唇が硬くなった茎を締め付け、腔内で舌が優しく愛撫している。
ときに深くまで飲込み、ときにフルートを吹くように海綿体と体皮が交差する感度の高いポイントを責め、私の反応を楽しんだ。
女は自分の肉体が火照り始めると、私の手を取って自身の望む場所へと導いた。
「胸を揉むときは、優しく、外側から」
「そこに指をかけて。ブランデーの香りを立たせるように、グラスを回す動きをイメージするの」
「アルコールとレーズンの相性は知っているでしょ。ゆっくりとあなたも味わいなさい」
レストランのコースのように、前菜から始まり徐々に盛上っていく。
メインディッシュのひとつである、肉めいたグラジオラスへと口づけを施すと、
女は「そこにお酒を垂らして。どんなカクテルよりも素敵な味になるはずよ」とリクエストした。
私は彼女の言葉に従い、アルコールを垂らし、愛液とともに味わった。
肉体が重なり合い、繋がっている間も、アルコールを楽しんだ。
女の口からアルコールが私の口へと移され、私の口から彼女の口へと運ばれた。

私は淫らにアルコールを楽しみながら、酩酊していく夜を眺めていた。

posted by flower at 13:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月02日

愛奴

「この世に生きている限り、誰でもひと役演じるものよ。猫が猫を演じるように、わたしはわたしを演じているの。あなたを魅了する淫らな女を」
真白い肌に、真黒い下着を身に着けた女は、私の方へ長い脚を伸ばすと、口づけを、と催促した。私にこれを断る理由など、ない。女のほっそりとしていながら、適度に肉感を感じさせる脚に、私は丁寧に口づけを施した。
「今日のあなたは奴隷よ。奴隷を演じるの、わたしの恋の奴隷よ」
紫色のマニキュアを塗った爪が私の鼻をつつき、鼻の頭を下り、そして唇を挑発した。
爪は唇をこじ開け、口へと入ってきて−−舌を弄んだ。
私は言葉を発することもなく、弄ばれ、その状況を楽しんでいる。
「わたしはあなたが好きなの。愛しているの。だから−−こんなことをしたくなるの」
女の両の手が私の顔を包み込み、わずかに潤んだ瞳で私を見つめている。
母が子に向ける眼差しのように。愛情と、得体の知れない何かが混濁している。
「あなたのすべてを支配したいわ」
女の真っ赤な唇が私の唇に迫ってきた。指に代わり、女の舌がぬらぬらと私の腔内を蹂躙する。歯の裏に、舌の裏に侵入し、その感触が口腔を伝って脳にまで響く。
私は抗うようにささやかながら舌で応戦すると、女の口に吸い込まれ、愛撫を受けた。
舌が互いの腔内を行き来する濃密な10分間が経過した。
「もっと気持ちよくさせてあげるわ」
女が手錠を持ち出し、私の両手にかけた。私の両手は臀部の後ろで繋がれ、不自由な状態となった。
「しっかりと立ちなさい」
そう言って、立たせたままの私の肉体に女の舌が這い出す。
耳孔に入り、項を這い、乳頭を挑発し、興奮で脈打つ赤黒い茎を責めた。
「罪深き存在」女の唇と舌と指先が敏感なその部分を長々と責めた。
快楽が下半身から力を奪い、立っているのが困難になる。
私がそのことを訴えると、女は「じゃあ、今度はあなたが奉仕する番よ」と私の頭部を掴んで甘い蜜の香りが漂う花芯へと導いた。
黒く細い下着の一部がかろうじて覆う秘所を鼻の先と口で露にし、小さな赤い突起を丁寧に舐めた。女の身体が脈打ち、声が漏れた。
舌先で包皮とその下にある硬く柔らかい花芯の状況を確認しながら舌を這わせる。
丁寧に往復し、ときに吸う。
女の口からは呻くような声が漏れ、鼻からは荒い息がこぼれた。
仰臥し、広げられた女の肉体に痙攣が見えてくると、私は女のクレパスを丁寧に愛撫した。もちろん、唇と舌と鼻のみで。
クレパスの奥にまで舌を射し込んで甘い蜜をかき出し、鼻の頭で敏感な突起を刺激した。
女の臀が浮き上がり、興奮が加速してくる。
女は私の硬くなっている茎を手にすると自身の内部へと導いた。
艶かしく潤んだもうひとつの唇が私を飲込む。
「いいのよ。もっと気持ちよくなって」女が腰を動かし、私に快楽が下賜される。
上下に動かされる腰の内部で、ザラザラとした肉壁と淫らな襞が私を包んでいる。
口とも、手とも違った趣きの快楽が広がる。
「あなたはわたしの愛の奴隷よ。だから、快楽を与えてあげるの。
わたしはあなたの理性も壊してしまいたいの。ほんとよ。
だって、もっとあなたの本能で、わたしを愛して欲しいんだから」
posted by flower at 08:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月18日

淫夢

忘れかけた頃に夢の中に現れる女の話である。
女は名を***と言った。
いつも目が覚めれば思い出すことができなかった。

女は真白い肌に、黒く長い髪だった。
胸は薄く、長身でほっそりとした印象だが、臀は大きく、適度な肉感を保っていた。
顔はわずかに瓜実で、目は大きく、そして睫毛が長い。
鼻梁は高く、綺麗に整い、唇は小さかった。
女は「耳がチャームポイントなの」と言った。
確かに可愛らしい耳だった。大きすぎもせず、小さすぎもしないのだが、耳孔の脇にある小さなホクロが不思議な魅力を湛えていた。

女はたびたび私に課題を与えた。
「手を使わずに、服を脱がせて」或いは「口だけでわたしを楽しませて」などと。
私はその言葉に従い、女を手を使わずに脱がせ、或いは唇と舌だけで快楽を与えようとした。

興に乗ってくると私たちは全裸でワルツを踊ったり、カードゲームをしたりした。
片方の手を握り、もう片方の手を腰に添えて、ときに互いの腰を引き寄せ、背中を抱きしめ、クルクルと踊った。
カードゲームではそれぞれへの愛撫が賭けられた。
勝利した側が相手の肉体の好きな箇所へ愛撫をするのである。
負けた側は、目隠しをされ、愛撫されている間、声を出してはいけない。
女は敏感な箇所を責められたときよりも、羞恥の濃い場所を責められたときの方が官能的な呻き声を漏らした。

肉体の悦びが昂り、お互いが濃厚なひとときを持ちたくなってくると女は私を組み敷き、潤度と粘度の高い箇所を私の突端にあてがい、ゆっくりと快楽を高めていった。
わずかに硬い部分同士が触れ合い、溢れてきた女の体液が私の腰の辺りを濡らしていく。
次第に私の突端は彼女のクレパスに飲込まれ、ひとつに繋がった。
女が腰を前後に動かすたびに、私の茎の尖端にある膨らみは、ぬらりとした女の内部で優しく、愛された。
女が好んだのは、互いに座った状態で愛し合うことだった。
曰く「とても密着しているから」とのこと。
私はと言えば、女の後ろ姿を眺めるのが好きだった。細い腰と豊かな臀部という魅惑的な造形は見飽きることがなかった。ただ、官能的な表情の女の顔を見ることができないないのが残念だった。

私たちは肉体が可能な限り、あらゆる角度で、あらゆるスタイルで交わった。
女は愛し方をよく知っていて、「これは古代インドで」とか「秦の時代の中国で」、または「中世のヨーロッパで、貴族の間で流行ったのよ」とその知識をたびたび披露した。
体位の変化に伴い、当初ゆっくりだった腰の振りは次第に速さを増していき、溢れる声も大きくなった。
前後の動きも上下に変わり、浅い抽送から、深いものへと移っていった。
深く強くこちらが呼応すれば、女は悦びの声を漏らした。

私の肉体から蒼白い存在が放たれると、女はいつもそれを神聖な箇所で受け止め、満足げな表情を浮かべた。そして、またね、といって夢の世界から消えていくのだった。
もしかしたらいつの日か夢の中に子どもを連れてくるのでは、と思ったりもするのだが。
杞憂だろうか。
posted by flower at 09:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月16日

淫愛

ある夏の記憶である。
私たちは夜のとばりが下りてくる頃になると部屋を出て街を歩き、太陽が支配する昼の間、カーテンを締めた真っ暗い部屋で愛し合った。

「夏の太陽が嫌いなのよ」彼女の言葉により、百日紅の花が咲き出す頃から秋の蟲が啼き始める頃まで、私たちはそんな生活を送った。

部屋の中に時計はなかった。
カーテンの隙間からわずかに射し込んでくる光と、窓の外の気配だけが私たちの時計だった。

起きている間私たちは、生理的な行為を除けば、純粋に愛し合う行為のみを繰返した。道具を用いることもなく、相手を傷つけることもなく、ふたつの肉体のみでできる愛の行為を繰返した。
「あなたはいっちゃダメなんだから」
あらかじめ私の絶頂は遠ざけられ、行為の終わりにのみ与えられた。
それゆえ私は、自己の肉体的な快楽を抑えながら、彼女の肉体を愛した。

ベッドの近くにはよく冷えた一本の白ワインが置いてあった。
喉が渇けばそれで潤した。
ときに彼女は口にワインをふくみ、私に口移しで飲ませてくれた。
口腔から口腔へワインが移ると、蔓のように舌が絡み合い、愛の時間が始まる。
両の腕が肉体に絡む。
それぞれの背中を強く抱き寄せて擦り、臀部の肉を撫で、掴み、耳を、項を、乳房を、乳頭をまさぐり、舐め、噛む。
「愛している」と言えば、彼女も「私も」と言い、手は下降し、互いの愛の象徴を愛おしんだ。
手の愛撫による興奮が高まってくると、口による愛撫へ移った。
彼女のワインをふくんだ唇が私の肉紫色の茎を包み、心地よく冷やした。
ときに強く吸い、丁寧に舐める。白粉花のような穂の部分へも、果実へも入念な愛撫が施された。
私も彼女の花芯を丁寧に舐めた。美しい花弁へも舌を這わせ、クレパスから滴る愛液を私は何度も味わった。彼女もまた私の尖端から溢れた蜜を何度も吸った。

彼女の感情が高まってくると、私たちは肉体を結合させ、重ねた。
腰では前後へのシンプルな動作を繰返しながら、両の手と口では表現の豊かな交歓を行った。
基本的に私が上になるか、彼女が私の上に乗るか、私が彼女の背後にいくか、横臥した彼女と脚を交錯させて結合するか−−そうしたエターナルな体位であったが、飽きることなく、心地よい疲労が訪れて眠りに就くまで、続けた。

「わたし思うの。この行為は、とても美しい行為だって。肉体以外に何も使わずに愛を表現しているのよ。言葉よりも、もっと深いところで愛を確認しているって思うの。あなたが最後に、わたしのなかで果てるとき、わたしはいつも幸福を感じるわ」
彼女の満足げな言葉は私を喜ばせ、また何度も欲情させた。

そんなふうにして私たちはひと夏を過ごした。
posted by flower at 16:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月30日

愛露

夏の短いの夜の間にだけ咲く、月下美人のような女だった。
いつも夜の間だけ逢い、鳥が啼き出す頃には別れた。

女からはほのかにジャスミンの香りがしていた。
私の腕に頭を置いて眠る顔は子どものようであり、おとなのようでもある。
長い黒髪に、瓜実の顔。太くない眉と綺麗な鼻梁が凛々しさを感じさせる。
白い肌が艶かしく、私は何度も女の腕に、腹に、胸に手を置いては、その弾力ある柔らかさを確認した。
女の腕には痣があった。
大小の、歪な形の、赤い、或いは紫の、痣が。
それは私の全身にもあった。
互いに噛み合い、強く吸ってつけたものであった。

女は云う。
「お金じゃないの、わたしを充たしてくれるものは」
「わたしに対してだけの、強く、大きな愛なの」
「だから、強く愛して欲しいの、夜の間中」
「心が溶け出すほどに愛し合いたいの」と。

私たちは肉体を貪り合った。
両腕を、両脚を絡め、胴体を合わせ、腰をあてがい。
そして、何時間にもわたり、唇を幾度も重ねた。
ときに、甘い感情が次第に密度を増し、アブノーマルな感性へと移った。
女の四肢をロープで縛り、目を布で覆い、女の肉体に舌を這わせ、指であらゆる箇所をなぞった。ひとつひとつの造形を、凹凸を、感触を確認するように。
女は身を捩りながら、悦楽と羞恥の呻きをこぼした。

「愛を下さい」
桃色のクレパスが体液のなのか、唾液なのか判らないほどに濡れてくると女は懇願した。
手足を縛ったままの女に、私は覆い被さり、体液が溢れる隙間に自身を滑り込ませた。
ぬるぬるとした襞を潜り、内部の空間に到達する。
わたしの敏感な尖端が、奥の、丸みを帯びた部分に触れる。
女の表情の艶かしさが増す。
私は腰を上下に動かし、内部で擦れる感触を確認した。
丸みを帯び、わずかに突き出した辺りに触れている。
女の口からは声にならない声が幾度も漏れた。
乳頭を吸い、クレパスの上部の突起に指を当てて、重層的な刺激を与えると、声も、反応も増し、女は自ら身体を動かして私をいっそう求めた。
悦楽が濃度を増してくると、私の腕を噛み、手が自由であれば肉体を抓り、脚が自由なら腰に絡めた。

私たちは互いの絶頂をできるだけ遠くへと追いやりながら、肉体によるの愛の交歓を飽きることなく繰り広げた。
交歓の最後はいつも、女が私から放たれる白い体液を受け止める行為だった。

「肉体が壊れるほどに愛されたいの」
「安っぽい言葉じゃなくて、体で濃密な時間を創って欲しい」
「ふたつの肉体が濃密な時間の中に交錯したとき、魂が絡みあうのよ」
「わたしは愛の中で、溺れて死にたいわ」
女はそう言って、何度も私に愛を求めた。
posted by flower at 15:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月16日

淫夏

目を醒ますと女の腕に抱かれていた。真白く、柔らかい肌の女だった。
私は何も身に付けていない彼女の胸に顔を埋め、そして大きくない乳房に舌を這わせた。
女の口からわずかに息が漏れ、山梔子に似た香りがした。
女は目を醒ました私を見つけると、額に口づけをし、そして笑みを浮かべた。
女は私の頭を撫で、私は彼女の乳頭を吸った。赤子のようだった。
ときに私は彼女の乳頭を舌で転がし、軽く噛んだ。
その度に彼女の口や鼻から息が漏れ、甘い香りが私をさらに魅了した。
私は右の掌でもう一方の女の乳房を揉んだ。
掌からわずかにこぼれる乳房は滑らかであり、よく練られたブレッドの生地のような弾力だった。掌が心地よく沈んでいき、優しく押し返された。
どれほどの間、そのような行為をしていたのだろうか、私が顔を上げて女を見ると、女の目は潤っていた。
掌が乳房を揉む、女から息が漏れる。潤った眼は私を見つめている。
私はその眼差しに応じるべく、掌を胸から腰へ、臀へと移した。肌はどこまでも滑らかだった。
大きな臀を強く揉んだ。少し汗ばんだ肌が、掌に付いてくる。
女の息はまたしても漏れてくる。甘い吐息が、間欠泉のように。
艶かしい表情を見つめながら臀を揉んでいると、女は顔を寄せてきて私の唇を奪った。
唇を奪う、という表現に相応しい口づけだった。
猛禽のように荒々しく唇を塞ぎ、舌が口腔の奥にまで挿入された。
エロスが増殖し、横溢していく。
私は掌を臀から移動させ、女の最も熱い場所を求めた。
中指で恥丘のクレパスの入口にある突起物を弄った。
クレパスから漏れた愛液がそこをも濡らしている。
木の実のような肉の芽を撫でるたびに女の口から呻きに似た声が漏れてきた。
そして、その呻きは指を裂け目へと滑り込ませたことで、より大きなものへと変わった。
二本の指で入口上部のザラザラとした部分を刺激するたびに女の肉体が捩れ、指と肉襞の間から蜜が漏れて、女の太腿を、私の掌を濡らした。
そして、汗と蜜とがシーツに沁みを作っていく。
一頻り戯れると、女は私の硬直したものを手にし、口を運んだ。
彼女の唇が肉の棒を愛撫する際に、口に溜まった唾液が淫らな音を演出する。
心地よさが私の下半身から力を失わせる。
頃合いを見計ると、女は仰向きになった私の上へ跨がり、自らの手で肉体を結び付けた。
蜜に充ちた内部はぬるりとしながら、海綿体を優しく強く刺激する。
女の腰が上下に、前後に動き、私の生命をどこかへ持っていきそうな快楽を寄越した。
ときに体位を変え、長い間私は繋がっていた。双頭の生物が互いの肉体を求めて戯れるように。
向き合うようにして女の臀を抱え口づけを交わしながら愛し合い、女の背後から強く肉を打ち付け、仰臥した女の上に重なり、声を漏らし、汗を流しながら、長いひとときを楽しんだ。
気付けばカーテンの隙間から射し込む明かりは昼のものから夕暮れのものへと変わっていた。
私たちはそうやって愛を確認すると、愉悦のうちに目を閉じ、眠りに落ちた。
私はまたしても女の腕に抱かれて。
posted by flower at 12:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 淫詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。